頭痛
日本人の3人に1人は頭痛持ちと言われ、多くの人が経験しますが、人によってその症状の現れ方は様々です。
頭痛は大きく2つに分類され、命にかかわらないとされる頭痛(一次性頭痛)、命にかかわる可能性がある頭痛(二次性頭痛)があります。多くの場合、一次性頭痛と診断されることが多いですが、慢性的な頭痛、ひどい頭痛でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
一次性頭痛
全体の約90%を占め、代表的な一次性頭痛は以下の通りです。
緊張型頭痛
一次性頭痛の中でも最も多く、首や肩の筋肉の緊張などが原因で、締め付けられるような重苦しい痛みが起こる頭痛です。
治療
マッサージや肩を温めることで筋肉の緊張が緩和され、頭痛が軽減します。また、日常生活での姿勢を正すことも効果的です。内服薬を使用する場合は、一般的な鎮痛薬を内服します。漢方薬や筋肉の緊張を緩和するための筋弛緩薬、予防目的に抗うつ薬などを使用する場合もあります。
片頭痛
片頭痛は、その名の通り頭の片側に起きることが多く、ズキンズキンと脈を打つような強い頭痛が4~72時間続くのが特徴で、多くの方が生活に支障が出ているといわれています。吐き気や嘔吐を伴い、光や音が気になることもあります。ギザギザした光がみえたり、視野の半分が欠けるような前兆を伴うこともあります。
20代から40代の女性に特に多く、社会生活に大きな影響を与えることが多いため、適切な治療が必要です。適切な薬を適切なタイミングで内服することにより、頭痛のコントロールを行います。
治療
急性期治療
頭痛が起こった時に使用する薬です。代表的な治療薬であるトリプタン製剤が主に使用されます。場合によって、漢方薬も使用します。
- スマトリプタン(商品名イミグラン)錠剤・点鼻薬・注射薬
- ゾルミトリプタン(商品名ゾーミック)錠剤
- リザトリプタン(商品名マクサルト)錠剤
- エレトリプタン(商品名レルパックス)錠剤
- ナラトリプタン(商品名アマージ)錠剤
予防薬
片頭痛の頻度が多い、頭痛がひどすぎる、副作用などでトリプタン製剤が内服できない、といった場合は予防治療を考慮します。
予防治療により頭痛の頻度、頭痛の程度を改善する事が可能です。
- バルプロ酸(商品名セレニカ・商品名デパケン)錠剤
- ロメジリン(商品名ミグシス)錠剤
- プロプラノロール(商品名インデラル)錠剤
2021年に片頭痛の予防薬として、新規に抗CGRP注射製剤が認可されました。効果も高く、副作用も内服予防薬に比べ非常に少ないため、従来の予防薬で効果が得られなかった、副作用が出てしまった方などは使用が考慮されます。
群発頭痛
眼の奥をえぐるような耐え難いほどの激しい痛みが、決まった時期に集中して起こる頭痛です。20~40歳代の男性に多く、年に1~2回、数週間から数ヶ月間続く「群発期」と呼ばれる期間に集中して頭痛が起こります。群発期の間は、毎日決まった時間に15分から3時間程度の激しい頭痛が1日に1~2回出現します。痛みは左右どちらかの片側性であることが多く、目の充血、流涙、鼻水、鼻づまりなどの症状を伴います。
治療
スマトリプタン皮下注射
片頭痛の治療薬であるスマトリプタン(商品名イミグラン)が群発頭痛にも効果があり、スマトリプタン皮下注射(1日2回まで)が群発頭痛治療の第一選択薬となります。投与して10分前後で効果が認められるほどの即効性があり、かつ有効率も非常に高い薬剤です。
酸素吸入
医療用酸素を15分間ほど吸入し、群発頭痛の症状を改善させます。安全かつ有効な治療として、一般的に普及している治療法です。群発頭痛は夜間に起きることが多く、自宅に酸素ボンベを設置し、発作時に酸素吸入をする在宅酸素療法を行う場合もあります。群発頭痛に対しての在宅酸素療法は、2018年に保険適用となりました。
二次性頭痛
二次性頭痛は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中、脳腫瘍、髄膜炎など、脳の病気が原因で起こる頭痛です。一次性頭痛とは異なり、他の病気の症状の一つとして現れ、緊急性が高く場合により命に係わる危険のある頭痛です。
脳梗塞
脳梗塞とは、脳の血管が詰まることで血液が流れなくなり、脳の細胞が死んでしまう病気です。命に関わるだけでなく、片側の手足や顔の麻痺、呂律が回らない、言葉が出ないといった後遺症が残る可能性も高いため、早期発見・治療が重要です。
脳出血
脳出血とは、脳内の血管が破裂し、脳内に血液が漏れ出す病気です。脳出血の原因のほとんどが高血圧です。高血圧により動脈硬化が進行すると、脳の血管が脆くなり、その結果破裂しやすくなります。脳梗塞と同様に突然発症し命に関わることもあるため、早期発見・治療が重要です。
くも膜下出血
脳の表面にある血管にコブ(脳動脈瘤)ができ、これが破れることで起こる出血です。突然の激しい頭痛が起こり、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。緊急で外科的治療(開頭クリッピング術あるいはカテーテルによる動脈瘤コイル塞栓術)を行う必要があります。
くも膜下出血はその場で死亡したり、一命は取り留めても重篤な後遺症を残し寝たきりになったりと、依然として予後の悪い疾患です。
二次性頭痛の中で最も危険で、最も迅速に対応すべき疾患と言えるでしょう。
脳腫瘍
脳にできる腫瘍です。頭痛以外にも、視力障害やてんかん発作などの症状が現れることがあります。
髄膜炎
脳や脊髄を包む膜に炎症が起こる病気です。頭痛以外にも、発熱や意識障害などの症状が現れることがあります。